解雇は勝手にできません

解雇とは

解雇とは、使用者による一方的な労働契約の終了であり、労働者の承諾は必要とされない(民法627条1項)。しかし、この解雇の自由は、解雇が労働者に重大な不利益を及ぼすことから、労働法等の各種規制に服している。

このことにより、(1)労働基準法、労働組合法、雇用均等法等の法令に抵触する場合(2)就業規則、労働協約上の解雇規制条項の抵触する場合、(3)解雇予告義務に違反した場合、(4)解雇権濫用にあたる場合等に該当する解雇は無効となる。

解雇には

解雇には、懲戒処分としての懲戒解雇(労働者側に原因がある場合)と、それ以外の普通解雇(労働者側に原因がない場合)とがある。また、普通解雇のうち、不況時を理由に経営危機打開のために労働者を解雇することを、特に整理解雇という。

法令による規制…事例を見ながら判断をしましょう。

1.業務災害の場合の解雇制限

労働者が業務上負傷や疾病にかかり療養のために休業する期間およびその後30日間は解雇することが出来ません(労基法第19条1項本文前段)。

質問:病気で休暇を取り、3週間後に出勤したら解雇といわれたが…

答:あなたのように「病気で休暇を取り、3週間後に出勤したら解雇」といわれた場合、解雇の理由を明示させ「解雇は不当だ」という意思表示をすることが大切。どんな場合でも、一方的な解雇は許さないという気持を持っていること。

2.産前産後の場合の解雇制限

産前産後の女子が労基法65条によって休業する期間およびその後30日間、解雇することが出来ません(労基法19条1項本文後段)。

3.差別的取り扱いの禁止

以下の差別的取り扱いの禁止事由に該当する解雇は無効です。

  1. 国籍、信条又は社会的身分を理由とするもの(労基法3条)
  2. 労働者が労基法違反の事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告したことを理由とするもの(労基法104条2項)。
  3. 労働者が女子であることを理由とするもの(雇用均等法8条)。
  4. 女子労働者が結婚し、妊娠し、出産し、又は労基法65条によって休業をしたことを理由とするもの(雇用均等法11条3項、労基法19条)
  5. 労働者が育児休業の申し出、又は育児休業を取得したことを理由とするもの(育児休業法7条)

4.労組法による規制

労働組合の組合員であること、労働組合に加入したり若しくはこれを結成しようとしたこと、又は労組の正当な行為をしたことを理由とする解雇は、憲法28条の団結権等の保障を内容とする公序の違反として無効(民法90条)となります(労組法7条1号)。

解雇予告制度

〔原則〕

使用者は労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日以内にその予告をしなければいけない。30日前に予告しない使用者は30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければならない(労基法20条1項)。

また、使用者が解雇予告手当を支払わなかった場合、裁判所は労働者の請求により、未払いとなっている解雇予告手当のほか、これと同一額の付加金の支払いを命ずることができる(労基法114条)。

使用者が解雇予告制度に違反した場合には6ヶ月以上懲役又は30万円以下の罰金に処せられる(労基法119条)。

質問:1年更新のパート契約で、まだ半年も期間があるにもかかわらず解雇といわれたが…。

答:パート労働者であっても、自由に解雇できるものではありません。入社後、 14日経過していれば、解雇予告通知及び解雇予告手当(平均賃金の30日分)を支払わなければ解雇できません。
また、有期雇用契約を結んだ場合、その期間は労使双方に契約内容を守る義務があり、契約期間の途中でどちらかが一方的にその契約を履行しなかった場合、契約不履行による損害を請求することが出来ます。その場合でも、解雇理由を明確にし、「整理解雇なのか、解雇に合理性があるのか」「当事者との協議がなされているか」などを明らかにする必要があります。

解雇権濫用による制限

解雇に理由があったとしても、解雇に「客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができないとき」は、解雇権の濫用として解雇は無効になります。つまり、第3者から見て解雇されてもしかたがないという理由があり、また世間一般から見て解雇も当然であるという事情がなければ解雇は出来ません。

整理解雇

1.整理解雇とは?

不況時、経営不振などを理由として経営危機打開のために労働者を解雇することを整理解雇という。

2.整理解雇の4要件

整理解雇においても、一般の解雇権濫用法理による制限が妥当するが、特に整理解雇においては、解雇権濫用の判断の基準として「整理解雇の4要件」が判例上確立されています。

(1)人員削減の必要性
会社の維持・存続をはかるため、人員整理が必要であること。人員削減措置の実施が不況、斜陽化、経営不振などによる企業経営上の十分な必要性に基づいていること、ないしはやむを得ない措置と認められることです。
(2)解雇回避努力義務
希望退職の募集、一時帰休など、会社が解雇回避の努力をしたこと。労働時間短縮、新規採用の停止、配置転換、出向、希望退職の募集、一時帰休などの雇用調整手段をとれるのに、それらを採用せずに整理解雇の手段に出た場合は、解雇回避努力義務を尽くしていないと言えます。
特に希望退職募集をせず、いきなり指名解雇した場合には,基本的に解雇回避義務を尽くしていないと判断されます。
(3)解雇される労働者の選定の妥当性
人員整理基準が客観的、合理的かつ公平で、人選も合理的であること。基準 をまったく設定しないで行われた整理解雇は、無効であります。
(4)手続きの妥当性
労働者に十分説明し、納得を得る努力をしたこと。使用者は労働者に対して整理解雇の必要性とその内容(時期、規模、方法)について納得を得るための説明を行い、誠意をもって協議すべき信義則上の義務を負います。
以上が解雇に関する法的部分です。もし解雇をはじめとして退職強要・勧奨、労働契約違反、いじめ・セクハラ、倒産、労災・職業病、賃金・残業未払いなどがありましたら、あなたの身近なところで労働相談を受付けています。

 

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